• 対談ログ- feel.社内演出の現在地 (第五編):立田眞一 × 吉澤太智
  • 対談ログ- feel.社内演出の現在地 (第五編):立田眞一 × 吉澤太智

対談ログ- feel.社内演出の現在地 (第五編):立田眞一 × 吉澤太智

feel.

今回は、有限会社feel.所属の社内演出として活躍されている、立田眞一さんと吉澤太智さんに対談いただきました。
同じ「演出」という肩書きを持ちながら、立田さんは作画畑からの、吉澤さんは制作畑からのキャリアチェンジ。歩んできた道のりは対照的です。
そんなお2人の、台本なしの本音トークをお届けします。

有限会社feel.
2002年設立。東京都小金井市に本社を構える。
瑞々しい美少女が登場するアニメ制作に定評がある。主な代表作に「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完」「Summer Pockets」「千歳くんはラムネ瓶のなか」など。

 

立田 眞一(たつたしんいち)
有限会社feel.所属。スタジオ創成期から主に作画面で現場を支えつつ、近年は演出としても作品づくりに携わる。主な演出作品に「スパイ教室」「Summer Pockets」など。

 

吉澤 太智(よしざわたいち)
有限会社feel.所属。日本大学芸術学部 映画学科出身。新卒入社後、制作進行・設定制作・デスク等を経て演出へ。主な演出作品に「Summer Pockets」「千歳くんはラムネ瓶のなか」など。

 

演出から見たフィール作品の魅力と、理想としている演出

――演出目線で見る、フィール作品の魅力や特徴をあえて語るとしたらどんなところでしょうか?

吉澤(以下 吉)やはり絵が綺麗という点は大きいと思います。

立田(以下 立)そこは作画部の意向が大きいですね。特に動画がなるべく崩れないように意識していて、キャラクターを魅力的に描くことにもこだわっています。あとはいい意味でなるべく動かさないこと。

吉)そうなんですよね。表現として緩急をつけることが大事なので、常に動かすような演出にはしたくない。

立)全てのシーンが同じように動いていたら、印象がぼやけてしまうんですよね。特にテレビシリーズだと全てのカットに同じ熱量をかけることはできないので、見せ場はちゃんと動かしてそれ以外はカロリーを抑える。それぞれのシーンに必然性を持たせて、不要なカットがないようにする。派手に跳ねるより、まず信頼される画面を作ることを意識しています。

吉)アニメは動くことで意味がついてしまうものなので、意図があるところだけ動かすのが演出として大事だと思っています。テレビシリーズのある1話の演出という観点だと、その1話24分の中でどこが山場かを逆算して、全体を整える。そのうえで、山場を最大限引き立たせるために緩急をつけていく。それが演出の仕事ですね。

――演出として思い入れのあるシーンがあれば教えて下さい。

吉)自分は最近だと『千歳くんはラムネ瓶の中』の8話がうまくいったと思っています。最後の雨のシーンと、中盤でなずなが叫ぶシーン、あそこを山場だと決めて周りをタイトに抑えました。その分処理や効果で画面を調整して山場に向かっていけるような形で演出していますので、よければそうしたところにも着目して見て頂けると嬉しいです。全体の構成の中でもやや重たい雰囲気のエピソードだったので、天候変化に併せて配色も徐々に暗くしていくといった工夫もしていて、さりげない部分ですけど心理効果は出せたかなと。

立)『千歳くんはラムネ瓶の中』の6話でバスケのシーンがあって。フィールとしてスポーツを正面から描くのは珍しいんですけど、ちゃんとやろうということで頑張りました。自分も昔バスケをやっていたのと、制作進行にもバスケ経験者がいたので、ほかのスタッフもできるだけ経験者を入れ込んだんです(笑) そうするとプレイヤーとしての感覚が共通言語になるので、「これトラベリングに見えるかも」「踏み込みが嘘っぽい」みたいな話を皆で突き詰めながら作っていました。あくまで嘘バスケなんだけど、嘘に見えないレベルまで持っていきたいという気持ちで取り組んだので、よければ見てみてください。他には自分が担当している『スパイ教室』のオープニングなどでは、わかる人にはわかるというレベルですが原作の小ネタをちょこちょこ入れています。あとは今後の展開も想定したうえでまだアニメに出ていないキャラも結構原作から持ってきて入れているのと、昔からやりたかったこととして、海外展開のロゴも台湾、韓国、タイ……と複数地域のタイトルを切り替えて出しました。その時に素材集めをKADOKAWAさんに頼んだんですが、タイ版のデータがなかなか見つからなくて大変でした(笑)

――そんなお2人にとって、理想の演出とはどんなものなんでしょうか。お2人の考えを教えてください。

吉)押井守さんの緩急、水島努さんのテンポ感など憧れとしている演出は色々あります。それとはまた別の話で、現実的な理想の姿としてはやはりスケジュール通りに素材を成立させて、リテイクを減らすことだと考えています。失敗を少なくする演出でありたいです。

立)自分はそのシーンに演出効果をさりげなく入れるであったり、芝居にちゃんと裏があるであったり、見る人すべてにはわからないかもしれないけどちゃんと意図してやっていますという作り方を意識しています。偶然ではなく、制作側の意図を狙った通りに届けられる演出が理想ですね。結果的に意図しない深読みでいい方向に捉えて頂くこともあるのですが、その逆になってしまうこともあるので、できる限り綺麗に組み立てることで、訴えたいことがちゃんと伝わるように努力しています。

吉)付け加えると、『サマポケ』の26話は小林監督のコンテ・演出回なんですけど、見たときに思わず泣きそうになったんです。キャラクターが感情的に盛り上がるところと、ストーリー的な盛り上がり、そして芝居が全部一致していてまっすぐ入ってくる。一方で今井さんの演出を見ると、キャラクターを可愛く動かすことに特化していて、ギャグを含めてとにかくテンポがいいんですよね。どうやってキャラクターを見せるかという点に徹している。演出というのは滅私の芸だと思っていて、物語をどういうふうに語るのかというのを突き詰めて考えて、自我を消していった先に少しだけ残るもの、それが個性だというような考え方です。そういった部分がフィルムとしてちゃんと出ているのか、という観点で最近作品を見るようにしていますし、その意味ではやはり小林監督や今井さんのような演出ができるようになりたいです。

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

立)皆様のおかげで我々スタッフ健康で日々過ごせています、ありがとうございます。またフィール作品を見てくださってありがとうございます。サブスクでもいいので気になった作品をちょこちょこ見て再生回数を伸ばしてもらえると、メーカー側に人気があると届きます。そうすると2期3期にもつながっていくと思うので、よければ応援していただけると嬉しいです。

吉)この記事をきっかけに、アニメ業界のことにも興味を持っていただいて、作り手を踏まえて作品を楽しんでもらえたら幸いです。もし「手伝えることがある」「アニメ制作の仕事がしたい」と思ったら、ぜひ業界に入ってきてください。入ったら皆仲間ですので。

みんなのコメント


YoKIRINをご利用頂いている皆様のコメントから、一部抜粋して掲載しています。