―――自己紹介をお願いします。
スタジオコロリド京都スタジオ所属の金原です。アニメーターとして動画検査と新人教育をメインに担当しているほか、第2原画作業や動画作業にも対応しています。また、週の半分は京都精華大学のアニメーションコースで教員として勤めており、主に必修基礎系の授業を担当しています。
―――アニメーターが大学で教鞭をとることは一般的なのでしょうか。
ベテランの方が本業を引退した後に教える側へ回るケースや、私のように大学とアニメーターの業務を兼業するケースが一般的ですね。学校でアニメーションを教えている教員はほとんどがアニメーターですが、教員とアニメーターを両立している人は、アニメーター人口の割合から見ると少ないかと思います。
―――大学での授業の内容はどのようなものでしょうか。
担当している授業内容は、作画の基礎に関わる部分です。必修授業ですので基礎知識から始め、簡単な中割りから日常動作、知識と画力を必要とするデッサン割りなど、様々な内容を教えています。タップを使って紙に鉛筆で描くアナログ作画から始め、基礎が固まり次第PCとタブレットを活用したデジタル作画も学びます。会社での新人教育と大学での教育内容はリンクしており、アニメーターとして就職した方に教える内容を、厚みを加えて1年生、2年生へ教えているという感じですね。
―――昨今は世界中でアニメ人気が高まっていますが、海外から日本のアニメに興味を持って留学してくる学生も多いのでしょうか。
非常に多いですし、出身も中国や韓国などのアジアやヨーロッパなど様々な国と地域から来ている印象です。私が学生だった10年ほど前は日本人学生が9割で、留学生は5人いれば多い方でした。現在は年度によって異なりますが、多い年は半数近くが留学生というような状況です。「日本語は日本のアニメを見て学びました」という学生も多く、授業も基本日本語で進めている環境となっています。
―――生まれ育った国を離れてわざわざ日本まで来てくれる学生の皆さんは、やはりアニメにかける想いも強いのだろうなと想像できます。
まさにその通りです。日本学生にも共通する部分ですが、モチベーションだけでなくスキルも非常に高いです。また、昨今ではYoutubeをはじめとして様々な学びの場があるため、意欲のある学生はどんどん吸収していきます。卒業後日本のアニメ業界で働くことを見据えるのであれば、テクニックだけでなく基本的な技能や現場での動き方、社会人としてのマナーなども身に着けていく必要があるため、やはり学生のうちに志を同じくした友人や様々な経歴を持った教員と関わりながら基礎を固めておくことは非常に重要だと感じます。
―――ありがとうございます。続いてスタジオコロリドでの仕事についてお伺いできればと思うのですが、ご担当されている動画検査はどのようなセクションなのでしょうか。
動画検査は原画から絵を起こした動画をアニメーションとして綺麗に繋げる際に、動画がしっかり動いているか、形が崩れていないか、映像として綺麗かといった要素を検査する仕事です。原画が花形として知られていますが、動画検査は縁の下の力持ちとして、アニメを作る上で欠かせない職種となっています。
―――重要な役どころですよね。そうするとキャリアのスタートは動画マンからでしょうか。
そうですね。最初は別の会社で動画、原画の経験をさせていただき、一度アニメ業界を離れて大学助手や非常勤講師などを経験したうえで、京都で新人教育を担当できる人材を探していたスタジオコロリドに合流したという経緯になります。
―――最近はアニメ業界でも新人育成に力を入れる会社が増えてきているのでしょうか。
時代の流れも含め、その傾向にあると感じます。業務内容や働き方、待遇も含めて最初から厳しい環境にしてしまうと、そもそもアニメ業界を志す人の総数を減らしてしまうことになりますので。最近は育成にも力を入れ、待遇面でも整備されている会社が増えてきている印象です。
―――そういった意味では金原さんの現場感覚とアカデミックでの指導経験がうまく相乗効果を発揮されている形ですね。兼務ならではの負荷もあるかと思いますが、働き方についてはいかがでしょうか。
教員との兼務を続けているので、臨時の補講や大学業務が発生することなどもありますが、スタジオコロリドではそうした事情も踏まえて臨機応変に対応いただいており、非常にありがたい環境だと感じています。
*中編へ続く