―――新人教育もご担当されているとのことですが、旭プロダクションでの新人教育はどういった内容なのでしょうか。
弊社では新人が入社すると、まず動画のセクションで基礎を学んでもらいます。ソフトウェアやツールの使い方や自社素材の作り方などを新人教育担当のもとで学びつつ、徐々に技術を向上させていきます。また入社初期には研修を行うのですが、まずは線の綺麗さを重視しており、例えば繋ぎ目などの原画のニュアンスがトレースしたときに消えてしまわないようにすることを意識してもらっています。その後、徐々に難しさを上げていき、振り向きの顔、歩き、走り、服や髪の毛の動きなどの課題を出していきます。基本的なことをクリアできたら次の課題へと進んでいきつつ、徐々に実践に向かうイメージですね。
―――会社としても手厚くフォローされているのですね。
そうですね、しっかりフォローしている方だと思います。初めの1年間は新人教育担当者と月1回の面談で苦手な分野や伸びている分野を確認しながら、2年目からは先輩方と一緒に仕事ができるよう新人教育を行っています。独り立ちを目指すうえで、まず新人には自分で問題を見つけ、その解決案を自分で出して改善していくことを意識してもらうようにしています。例えば面談を通じ、日ごろの取り組みの中でうまくいかなかったことがあれば、それに対してどうすればいいかという対策を練ってもらっています。
―――ありがとうございます。続いては、そんな鈴木さんのアニメ制作におけるこだわりについて教えて下さい。
メリハリという観点ではやはり作品としてのつかみであり、作品を見続けるかに大きく影響する1話や、作品を見終わったときに一番心に残るであろう最終話に関しては特に力を入れています。中でも最終話は作品の集大成として視聴者に大きなインパクトを与える、あるいは次につながるイメージを持ってもらえるような絵になるよう、こだわって作っています。また私自身が作画監督を目指しているので、キャラクターの絵を似せることにも力を入れています。作画として担当した部分については作画監督さんがチェックしてくれますが、自分でも似せる努力をしていかないと、その立場を目指せないと考えているので、今任されている仕事のうちからもそうした次のステップを意識した原画作りをしています。また、違和感のない動きや芝居に関しては視聴者の皆様に違和感が残らないよう、自分で実際に動いてみて得た気づきなどを取り込むような形で絵に落とし込んでいます。
―――違和感のあるなしについてはどのように判断されているのでしょうか。
演出面の観点では作品のトーンを踏まえて判断することが多いです。例えばリアル調の作品でコミカルな動きが出てきてしまうと明らかに浮いてしまいますし、逆もまた然りです。演出上の意図がある場合はよいのですが、そうでない場合はこの動きが作品全体の世界観に合うかを基準に考えています。ただしそうしたトーンについて監督や演出といったディレクション側と考え方があっているかについては実際に作業しながらすり合わせていく部分もあります。過去に担当したケースでは、悪夢を見て飛び起きるというシーンで、実際に飛び起きるのは動きに無理があると考え、体を横にひねってから起き上がるという動きを描いたのですが、この作品の雰囲気であれば直接飛び起きてしまってOK、といった形で監督から意見を頂き、それをもとに演出がアタリを入れ、作画監督が絵を載せた形で修正依頼が届き、それを私が改めて清書するといったことがありました。
―――アニメ制作がチームで行われていることがよくわかります。
修正する際には、監督・演出・動画検査などから修正要望について指示書き頂いたリテイク表というものを参照し、その内容に沿って作業をすることが大前提なのですが、それに加えて個人的に気になった部分を時間の許す限り自主的に修正する(自主リテイク)ことも心がけています。
―――ご自身への負荷がかかることを踏まえても自主リテイク対応されるのですね。
担当話数は毎回本気で作っているのですが、作品全体で見たときにスケジュールが厳しいパターンなどもあるため、できるだけ動かしたいと考えて多めに作画したパートが、コストや他パートとの尺の兼ね合いなどで枚数を削られてしまうといったこともあります。そういった意味でも、自分の頑張りでクオリティを上げられる部分はできるだけ対応したいなと。また制作工程全体を俯瞰すると、完成に近い状態まで作り上げてから修正点に気づいて対応する場合その分手戻りも大きくなってしまうため、作画の段階で早めに修正しておけるとベターだから、という点も自主リテイクする理由の一つです。
*後編へ続く